作家・有吉佐和子(1931~84年)の戯曲「ふるあめりかに袖はぬらさじ」が、新橋演舞場(東京都中央区銀座6丁目)で9月2日から上演される。72年に初演され、杉村春子、坂東玉三郎らが主演を務めるなど、繰り返し上演されてきた名作だ。今回、主演を務めるのは大竹しのぶさん。大竹さんが考える「不都合な真実」とは――。
「この作品は約50年前に書かれた喜劇ですが、ジェンダーや報道のあり方など今も変わらない普遍的なテーマがわかりやすく描かれている」と大竹さん。
物語の舞台は、攘夷(じょうい)派と開国派が激しくぶつかり合う幕末の横浜。花魁(おいらん)の亀遊(きゆう)は通訳の藤吉と恋仲だったが、アメリカ人に身請けされる話が決まってしまう。亀遊はショックで自害するが、その死は「異人に身体を許すならば、と自ら命を絶った」という「美談」として、瓦版に報じられる。
その後、遊郭は攘夷派の武士らで大繁盛。大竹さん演じる芸者・お園は亀遊の友人で、自害の真実を知っている。攘夷派のため、うそと知りつつ、亀遊の美談を自らも歌って語るなど、渦中に巻き込まれていく――。そんなあらすじだ。
うそが真実であるかのように伝えられ、いつしか信じられてしまう。似たような体験をしたことがある、と大竹さんは振り返る。
ゴシップだけがネット上で残ってしまって……
ゴシップの拡散力を身をもって知ったという大竹しのぶさん。有吉佐和子が描いた50年前も今も変わらない人間の本質とは?
「これまで何人とつきあいま…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル